ドローン物流市場は今後どうなる?現在の活用分野と将来性を解説
ネット通販の拡大や物流業界の人手不足を背景に、新しい輸送手段として注目されているのがドローン物流です。
以前は「ドローンで荷物を運べるか」を確認する実証実験が中心でした。しかし現在は、離島や山間部への配送、医薬品の輸送、災害対応、建設・林業現場への資材搬送など、用途ごとに実用化が始まっています。
一方で、ドローンが街中を飛び、各家庭へ日用品を届ける光景はまだ一般的ではありません。
ドローン物流市場は、実証実験から本格的な事業化へ移る途中の段階にあるといえるでしょう。
ドローン物流市場とは?
ドローン物流とは、無人航空機を使って荷物や資材を輸送する仕組みです。
ドローン物流と聞くと、ネット通販の商品を自宅まで届けるサービスを想像するかもしれません。しかし、実際には次のような幅広い分野が含まれます。
食品や日用品などの小口配送
医薬品、検体、血液製剤などの緊急輸送
離島、山間部、過疎地域への生活物資配送
災害時の支援物資輸送
工場や物流施設間の輸送
建設、林業、送電線工事などの重量物搬送
既存のトラック輸送を補完する配送から、人力やモノレール、ヘリコプターで行ってきた特殊な搬送まで含むのが、ドローン物流市場です。
日本のドローン物流市場は現在どの段階?
実証実験から実際の運航へ
これまで全国各地で、自治体、物流会社、航空会社、通信会社、ドローン事業者などによる配送実験が行われてきました。
初期の実証実験では、機体が安全に飛行できるか、荷物を正確に届けられるかを確認することが中心でした。
現在は、実際の利用者へ荷物を届ける運航や、トラックなどの既存物流と組み合わせたサービスなど、継続的な利用を前提とした取り組みへ移り始めています。
ただし、ドローンだけで大規模な物流網が構築されているわけではありません。特定の地域や経路、荷物に対象を絞り、採算性や運航体制を検証しているのが現状です。
レベル4飛行で広がる可能性
2022年12月の改正航空法施行により、一定の条件を満たせば、有人地帯で補助者を配置せずに目視外飛行を行う「レベル4飛行」が可能になりました。
これにより、将来的には離島や山間部だけでなく、人が生活する地域を通る配送ルートも設定しやすくなります。
ただし、レベル4飛行には、機体認証や操縦者技能証明などが必要です。制度ができたことと、低コストのドローン配送がすぐ全国へ広がることは同じではありません。
安全性と事業性の両方を成立させることが、市場拡大には欠かせません。
ドローン航路の整備も進んでいる
ドローン物流を広げるには、事業者が飛行ルートを毎回一から設計するのではなく、安全に利用できる空の経路を共通化する必要があります。
そこで整備が進められているのが「ドローン航路」です。
一定の空間を航路として整備し、運航管理や情報共有の仕組みを複数の事業者が利用できるようにする構想です。2025年には、秩父エリアと浜松市で先行的なドローン航路の社会実装が始まりました。
航路の登録制度や運用ルールが整えば、飛行前の調整負担が減り、同じ地域で複数の物流サービスを展開しやすくなるでしょう。
成長が期待される4つの物流分野
1.離島・山間部・過疎地域への配送
早期の普及が期待されているのが、既存の配送に時間と費用がかかる地域です。
人口が少ない地域では、トラックが長い距離を走っても、一度に届ける荷物が少なくなります。海や山を越えて目的地へ直接飛行できるドローンは、地域の配送拠点から集落や診療所までを結ぶ手段になります。
トラックを完全に置き換えるのではなく、目的地までの最後の区間を担う「ラストワンマイル」での活用が中心になると考えられます。
2.医薬品・検体などの緊急輸送
医薬品や検体は荷物の量が少なくても、速く確実に届けることに大きな価値があります。
道路の渋滞や地形の影響を受けにくく、地点間を直接結べるため、病院、診療所、検査施設間の輸送と相性がよい分野です。
一般的な日用品よりもドローンを利用する目的が明確で、費用対効果を説明しやすい市場でもあります。
3.災害時の物資輸送
地震や豪雨、土砂災害によって道路が寸断されると、トラックによる輸送が難しくなります。
ドローンは、孤立した地域へ医薬品、食料、通信機器などを運ぶ手段として期待されています。
ただし、災害が起きてから飛行方法を考えるのでは迅速に対応できません。平常時から自治体と事業者が協定を結び、飛行経路や離着陸地点、物資の受け渡し方法を決めておく必要があります。
4.産業用の重量物搬送
小口配送とは別に、市場拡大が期待されているのが、建設、林業、電力、地質調査などの産業用搬送です。
大型物流ドローンには、数十kg単位の資材を運べる機体も登場しています。山間部や急斜面など、車両が入れない場所へ資材を運ぶことで、人力運搬の削減や工期短縮につながります。
一般宅配と比べると運航回数は限られますが、1回の搬送で削減できる労力や設備費が大きいため、比較的事業化しやすい分野です。
ドローン物流市場が抱える課題
配送コストを下げられるか
ドローンは無人で飛行できますが、現状では飛行計画、安全確認、機体整備、バッテリー交換、荷物の受け渡しなどに人手が必要です。
運航回数が少ない地域では、機体や人員の費用を回収できない可能性もあります。
今後は、1人が複数機を管理する遠隔運航や、複数の企業が航路や離着陸拠点を共同利用する仕組みが重要になります。
積載量・航続距離・天候
機体には、積載できる重量と飛行できる距離に限界があります。荷物が重くなるほど飛行時間は短くなり、強風、雨、雪などの影響も受けます。
そのため、ドローンだけで輸送を完結させるのではなく、トラック、船舶、自動配送ロボットなどと組み合わせることが現実的です。
安全性と地域の理解
住宅地や道路の上空を飛行する場合、墜落や荷物の落下、騒音、プライバシーへの不安にも対応しなければなりません。
技術的に飛行できるだけでなく、地域住民や土地管理者へ運航目的と安全対策を伝え、信頼を得ることも市場拡大の条件です。
今後、ドローン物流市場はどう発展する?
自動化・遠隔化が進む
飛行ルートの自動設定、機体の遠隔監視、自動充電、複数機の一括管理が普及すれば、1回の運航に必要な人数を減らせます。
市場が本格的に拡大するかどうかは、機体価格だけでなく、日常的な運航にかかる人件費や調整費をどこまで下げられるかに左右されます。
運航を支える周辺市場が成長する
将来は荷物を運ぶ事業者だけでなく、次のような事業者もドローン物流市場を構成するようになります。
ドローン航路の整備・運営
離着陸拠点の設置
通信・気象情報の提供
運航管理システム
機体の整備・保守
貨物・賠償保険
荷物の受け渡し設備
ドローン物流は、機体を販売する市場から、運航、インフラ、データ、保守などを含むサービス市場へ広がっていくでしょう。
まとめ
ドローン物流市場は、実証実験だけの段階から、地域や用途を限定した実運用へ進み始めています。
ただし、すべての荷物が一斉に空を飛ぶようになるわけではありません。
まずは離島・山間部への配送、医薬品の緊急輸送、災害対応、産業用重量物搬送など、ドローンを利用する価値が高い分野から市場が形成されていくと考えられます。
今後、ドローン航路、自動運航、遠隔管理、離着陸拠点などの基盤が整えば、運航コストが下がり、利用できる地域や荷物の種類も広がります。
ドローン物流は、トラックや船、ヘリコプターをすべて置き換える乗り物ではありません。既存の物流手段では運びにくい区間を空から補完する、新しい物流インフラとして発展していくでしょう。